アレックス    

 モニカ・ベルッチが又も又もR-18作品に登場。当然の事のようにバンサンカッセルも出演です。冒頭からエンドロールが逆転して始まり、『メメント』宜しくぶった切ったフィルムが逆転して物語が進んで(戻って)いきます。それぞれの逆転のきっかけに、それ程の意図は感じられません。ゆえに逆転現象が『メメント』のような物語の小道具としての意味合いは、無いように思います。全体を通してのテーマ性を上げるために、こうしたのだろうと考えるのが素直かな。ただ、これ元に戻すとただの映画じゃないの?って思ってしまうのは私だけではないはず。作り手が見せたいのは、事が起こる前(映画的には後)、主人公の三人がどういった考えだったか、ここだと思います。電車の中で止め処無く繰り返されるバカ話のような。この辺りは中々面白く、性別や人格を越えた意見の相違なんかが見れて楽しいです。ただもう少し突っ込んだ会話にしても良かったような気が。今一寸止め感が強く、後に起こる事の衝撃に負けてる様に感じます。もっと事件のインパクトと同様の重たいテーマの租借が出来ていれば、前後の天秤がうまく振れあういい構成になったと思ったのですが。その辺りの作りこみが甘いと感じた作品でした。

運命の女    

 全てを手にした女性がほんの些細な事から不貞に走り、それにより全ての幸せが砕け散る様をゆっくりと描いたヒューマンサスペンス。妻と夫の心情にかなり接近して物語が進むだけに、ここで描かれている事象を具に追っていくための映画としては、中々良く出来ている気がします。だからと言って正直何故この妻が若い男性に走るのか?その心情は理解できませんし、理解したいとも思いませんが。こういうタイプの映画には珍しく映像が非常に美しい。硬質で陰影にこだわった画面作りは、映画全体の質を上げるのに成功していると言えます。ただ如何せん物語が普通すぎる。妻が不倫して、夫が気づき、そして破滅へ。そんな普通の出来事を淡々と映像化しているだけだと感じます。映画としてのシナリオの存在意義が全然感じられない。もっと大胆な展開になっても面白かったと思うのですが。


 心の美しさが外見に表れるという魔法(?)をかけられたハルは巨漢の女性ローズマリーと恋に落ちるという非常に奇抜でお伽話的な設定をシニカルなブラックジョークが自慢のファレリー兄弟が見事に料理した素晴らしい作品です。何が凄いって台詞の非常に哲学的で深遠な意味合い。価値観というものが凄くあやふやでともすれば一瞬にして真逆のモノになりうるという事実をハルの目線とその他の人々の目線の違いによって浮き彫りにしています。精神は肉体という入れ物に宿ると言う先人の言葉宜しく、偏見に固執した人々を痛快で厳しいジョークによって笑い飛ばしてくれます。去年の良作であった『シュレック』にも通じる深い精神性をも持っています。ファレリー兄弟のえぐるようなジョークはまかり間違えばただの下品な物言いになるという危うい側面を持っていますが、この作品にいたってはシナリオと彼等の表現が見事に合致していると言えるでしょう。凄く変化球な作品では有りますが学ぶ事の多い映画で色んな立場の人に見てもらいたいと感じました。


 黒沢清監督作品。あれ?結構久々でしたっけ?不器用にしか生きられない若者の心を直接突くのではなく、独特の空気感のみで表現、そして抉っています。こういった手法は下手を打つと意味が全く分からないイメージビデオ見たいになってしまいますが、この作品はそういう決め所はキッチリきめている印象がありました。結局テーマは居場所なんだと思う。皆が皆、自分自身がいる場所、自分自身がいていい場所、またいなければならない場所を模索しつつ生きていると。それは感情を剥き出しにする若者だろうと、分別のある大人だろうと、クラゲだろうと同じだという事。浅野 忠信とオダギリジョーの自然体の演技もお話のもつ雰囲気に花を添えていると思います。ただやっぱり作り手の意図が今一伝わってこないシーンも多々あります。「多分こう言いたいんだろう??」ぐらいの理解しか望めないシーンが、これだけ沢山あるとやっぱりちょっとテーマ性を大事にする本作ではまずいかなと。私的にはりょう演じるキャラクターを使って、もっと芯の通った台詞を言わせ、他のキャラクターへの反証に使って欲しかった。そうすれば全体としてもっと締まったつくりになったのではないかと思いました。


 自分でつくづく単純だとは思いますが、大好きなパターンの映画!大好きな匂いのする映画といってもいい。実は私が思っていた展開とはちょっと違うアプローチが取られていました。メジャーリーガーになるまでをサラッと描いて、そこからの物語を深めに描いていくと思っていたんですが、そうではありませんでした。主人公の子供時代、高校教師時代、そしてメジャーリーグ時代、それぞれで結構な時間を使っています。パート毎でで見せる演出を心がけつつ、人々の心の動きを丁寧に描いていて、その毎々で感動できます。それが全体を通しての人生の高低に繋がっていて、映画としての構成が非常に巧いと感じました。テーマとなっている人との絆が網目のように張り巡らされていく所がまた見所。生徒との、妻との、子供との、社会との、そして父親との絆。それがもぅ予定調和バリバリでラストで綺麗に紡ぎ上げられます。最後のき恥ずかしながらも息子を誇りに思う父親の後姿に感動いたしました。結構入っているとの事ですが、映画的演出が必要ないほどの奇なる事実。その極上の素材を見事にアメリカ的に纏め上げていると思います。素晴らしい作品だと思いました。

イナフ    

 ドメスティックバイオレンスをモチーフとし、非常にアメリカっぽいテイストを随所に盛り込んだ作品です。細かいことは無視してとりあえず女性が困難に打ち勝つ姿を単純明快に描いていて気持ちいいです。前半の不条理な扱いに屈する姿と、一変して戦う姿勢を明らかにする姿のギャップがアメリカ映画的ギャップ演出の真骨頂って感じです。後半の反撃シーンはテンポも良く単純にスカッと出来るという点では評価に値すると思います。あとまるでファッションショーのように衣装を変えるジェニファーロペスが魅力的。さすが、今乗りに乗っている女性だけあります。ただしやっぱり復讐のやり方にあまりに問題があると思いますね。映画だからアリかも知れませんが、冷静に見るとこれって暗殺じゃ・・・、って。暴力には暴力で、というこの映画の根本的なテーマ自体が間違っているような気がします。アメリカ人的にはこれでオッケーなんでしょうか?私的には最後に彼を社会的に抹殺する、大きなオチが待っていると思っていただけにちょっと引きました。いやっ絶対そういう方が面白くなったと思ったのは私だけ?

アイリス    

 かなり期待していた作品です。これは凄い。何が凄いって映画としてはそれ程大きな山谷がある訳ではなく、純粋に演技の素晴らしさだけで2時間もたしてるって所。アカデミー賞以下いろいろなショーに演者達がノミネートされていたのも頷ける。恐ろしいほどの役に入り込んだ演技に正直ドキュメントフィルムかと思わされるほど。特にジュディ・デンチとジム・ブロードベントの演技は驚嘆以外何者でもない。まるっきり同じ人が演じていると思わすほどのキャラクターの理解と、その表現力は意見の価値ありでしょう。テーマは単純に純粋愛。人はどこまで人を愛すことが出来るのか?そんな何度も問われてきたテーマに、実話の映画化でもう一度挑むって所に意義があるのでしょう。最後に車から投げ出された夫妻が大笑いするシーンが非常に印象的。確かに映画としてはかなり弱いと言わざるを得ませんが、中々凄いモノが有る作品です。


 公開当時からCG系の雑誌で話題になっていた本作。正直私がこれ手伝えって言われたら全速力で逃げます。それくらい面倒くさい事をやってます。よくやるよ・・・。その努力と根性は賞賛に値するでしょう。結構カッコ良いし人の特徴をうまく捉えたディフォルメはかなりうまいです。まぁそれはそれ、映画としての評価は映画としての評価ですから。これまた映像表現に負けず劣らず突飛な内容で無茶苦茶です。ストーリーらしいストーリーは全く無く、主人公であろう少年が(恐らくは)死に瀕した夢の中で、沢山の他人から現実と夢と人と死について延々とお話を聞かされるだけ。物凄く長く難解な台詞の応酬で字幕を追うだけでやっとな感じ。言ってる事を本気で理解しようとすれば結構面白いのは間違いない。特に夢の中でそれが夢であるかないかを判断する方法の辺りは、中々興味深く聞かせていただきました。まぁこればっかりは内容の整合性なんかを求めてもしょうがない映画だと判断し、つらつら流れる妙な空間を楽しみましょう。劇場はかなり若い人が沢山いたのですが、始まって20分ぐらいで半数以上が寝ていました。一応どういうった作品か調べてから見に来る事はしないのねって思いました。

OUT   

 私はこの原作が以前から非常に好きで、テレビ版も欠かさず見ていたほどです。テレビ版は、有り余る時間で出来るだけ忠実に原作を再現することに 使っており、倫理的に問題のあるシーン以外は中々良く出来ていました。さて映画はというと、これはもう全く別物です。といってもそんなに悪くは無い と思います。原索のOUTの設定でノリの軽いガールズムービーを作ったという感じ。それぞれのキャラクターも少しずつ違っていて全員軽めです。特に後半 まるで違う展開のなる辺りは、中々爽やかで気持ちのいいラストを迎えさせてくれます。ただし、やはりこの物語の核になる部分を端折っているだけに ちょっと疑問の残るところ。一番は香取雅子の研ぎ澄まされたナイフのような思考力と、強烈な心の闇が描かれていないところ。これがこの異常な犯行の 歯車を推し進める大きな原動力となっているだけに、欠いていると全く違う物語なってしまいます。何故何の見返りも無い雅子が、遺体をバラバラにすると いう僥倖にあっさりと手を貸すことになるのか?ここがこの物語の大きなテーマになっていると思うので、せめてココはすっ飛ばさないで欲しかった。 たぶん原作もテレビ版も全く知らない人はこの映画を見てそれなりに楽しめたと思います。私もそれなりに楽しめました。でもそれは本当のOUTとは違う モノを楽しんだことになるので興味のある人は原作を読んでみることをお薦めします。


 ジョディー・フォスター女史がついに本格的に映画製作に携わりだした本作。未成年のやり場の無い全てに対する怒りが画面から伝わってくる気持ちのいい作品 でした。ジョディーはさておき今売り出し中の演技派ティーン俳優達が非常に活き活きと演じており見所でしょう。今から押さえておきたいところ。なかでも ジェナ・マローンの演技は若々しくも重苦しく素晴らしいです。これからもたくさんの映画にアサインされている要因が伺えます。カルキン兄弟のキーランも 魔少年を見事に演じています。そして忘れてならないのはマクファーレン製作のアニメショーン。少年達の置かれている立場とオーバーラップしつつ独自の 解釈を見せるアメリカンアニメーションはあたりまえですがイケてます。こういった方法論で少年少女の心の葛藤を描くのは以外にいいなと感じました。子供の なんでも夢見てしまう空ろな精神を表すのには向いていると思います。何の台詞も無く粛々と終わっていくラストシーンもいい感じです。全体の完成度としては 如何せん高くありませんし、いろいろ突っ込みたい所は満載です。でもキラリと輝く原石のような荒削りの良さが見て取れる、そんな作品です。

甘い嘘   

 ジャン・ユーグ・アングラード主演の新作。これを見終わって直感的に思ったのはホントに最初からシナリオは出来ていたのか?って事でした。どうも最初のほうから徐々にお話が湾曲していっているような気がしました。伏線のシーンを後で付け足したかと思えるほど唐突な展開だったり。多分そんなことは無いのでただ単に話の展開が荒い造りになっているだけだとは思いますが。テーマは単純に愛。チープだけどそれをいろんな角度から描いています。分野としてはサスペンスなので後半はバタバタと謎が噴出しては消えていきます。その謎の数々がどうも納得いかないものが多い。妻のほうの不可解な行動はまだ納得できる部分があるのですがメイドの心理がイマイチ理解できない。どういう思いでそう云う行動に出たのか?一応説明もあるのですが納得がいかないというか、理解が及ばない。最終的にはテーマである愛の不確実性について一応の結末を見るのですが・・・。そこまでして愛にこだわった大富豪の心理も描かれていない。いろいろな意味で片手落ちだと感じた映画でした。


 ヒューグラントがヒューグラントらしい役所をきっちりこなした感のあるこの作品。服装と髪型のせいかなんだか彼、若返ってるように感じたのは私だけでしょうか?まぁそれは置いといて作品の評価を。主人公ウィルの世捨て人的モノローグとイギリス特有のまったりとして言葉は悪いのになぜか品のあるジョークの応酬が耳心地がよくそれを聞いてるだけでも2時間が過ぎていく。そんな言葉の力を感じれる作品でした。特に自分の事を島に例えるくだりは現代の若い世代にとっては身につまされるものがあるのではないでしょうか。ただ主人公が何十年も頑なに守っていた自分の心の砦とも言うべきものをなぜ少年が簡単に破る事が出来たのか?そんなにこの少年は特殊だったのだろうか?なぜ二人はそれ程引き合う事になったのか?今まで殆どモノとしてしか見てなかった女性に主人公は急に恋に落ちたのか?この辺りの心理描写が今一私には読み取れませんでした。もうすこし上映時間を延ばしてその辺りをもっと突っ込んで描いた方が全体としてまとまったのではないかと思います。あっレイチェルワイズは相変わらずお美しい(と、毎回とりあえず書いておく)。


 その高い精神性の映画化を評価されて2002年のアカデミー賞主要5部門にノミネートされた本作。日本では全く話題にも上りませんが私的に非常に見たかった作品です。恐ろしいほど静かで重く心にのしかかって来る映画です。強烈な殺意を絵にして額に入れたらこういう風になったという感じ。ドメスティックバイオレンスに関する問題と被害者と加害者という問題。両方を実に過酷に生々しく描いていて正直後半の重苦しい展開に吐き気をもよおすほど。善良で模範的な夫妻が子供を殺されて、その加害者が自分達と同じ街に住まなければならないという現実を突きつけられて被害者から加害者へと豹変していく。そのじわりじわりと夫婦の関係や人の心が闇にむしばまれていく様子が哀しく寂しく画面を流れ行きます。ラストシーン周りのシシー・スペイセクとトム・ウィルキンソンの演技は余りにもリアルで絶対に見逃せないところ。普通の人の普通の人生にも余りにも簡単に絶大なる邪悪が宿るという事の真実を見せ付けられました。昨今の聞くに堪えない凶悪犯罪を当たり前のように耳にする環境に置かれている我々にはこの映画をみて何かを感じておかなければならないと感じました。


 もぅ完全におじいちゃん入ってるシワシワなパチーノ。悪役初挑戦のロビンウィリアムス。『ボーズドントクライ』のヒラリースワンクもついでに付けて尚且つあの『メメント』の監督が撮っている。なんだか触れ込みだけで満貫って感じでいつもながら逆に不安を覚えつつのこの作品。あんまりでした。とにかく話が暗い暗い。白夜でずっと明るいはずのアラスカが常に澱んで見える。息をするのも辛いようなパチーノとやっぱり悪役になりきれないロビンウィリアムス。この二人の駆け引きが話の主題になっているのですがどうも両方ともかなりの抜け作で「お前そんな捜査で犯人見つかったらラッキー以外何者でも・・」とか「そんなチャチな偽装工作でばれない訳が・・・」とか、そんな気も無いのに突っ込みたくてしょうがないシーンの連続。殺しの動機も方法もちゃちいし。『メメント』であれほど綿密で破綻の無い物語を作りあげた監督がこんな適当な作品を撮るとは。正直幻滅でした。中で唯一光を放っていたのがヒラリースワンク。いままで役に恵まれていないと私的には感じていただけに今回の役どころは彼女の聡明で思慮深い面構えが非常に合っている感じました。最終的には一番おいしいところを持っていきますしね。これを踏み台にドンドン飛躍して欲しい限りです。


 ジョンウー監督の久々の新作。私は基本的に今まで監督が手がけてきた分野、ひねりの無い現代アクションがあまり得意では有りません。『フェイスオフ』も『MI2』もそういった意味で世間の評判ほど私的な評価は高くありません。そして今度は私がもっとも苦手とする戦争映画。どうにもこうにも彼とは相性がよくないらしい。さてこの作品、アメリカで歴代まれに見る大こけした作品として有名でどうやらギネスブックの最大赤字映画部門の栄冠に輝くのはほぼ間違いないらしいです。そういった負の触れ込みばかり聞かされていたのでかなり軽い気持ちで見に行きました。まぁ面白くは無いです。突込みどころ満載。日本人の描写はそんなに見れないことも無いですがお話自体が無理無理で「そりゃないだろ!」って言う部分は5分に一回はやってきます。ニコラスケイジのキャラクターもイマイチ固まっていずシーン毎に見方が変わってしまう有様。根っこの無い映画というのが端的な表現かもしれません。座ってないと言うか何と言うか。ジョンウーのキャリアに燦然たる黒星を刻む映画にはふさわしいと思います。やっちゃったものは仕方ないですので、更なる飛躍の肥やしにしてもらいたいものです。


 今話題のメキシコ発の新感覚オムニバス映画。犬をキーワードに展開する人の汚い部分のみをえぐったこの作品は、中々見ごたえがありました。同軸線上でパラレルに繋がる3っつの物語達が各々非常に重く暗い。なので見終わった後には肩に重量感をたっぷり感じれる、そんな感じです。人は裏切り謗り、そして敵対する。そんな噛み砕くのに時間の要するテーマばかりを真っ向から表現している所は評価に値しますが、後半少々食傷ぎみになってきてしまいます。上映時間も長いし。私的には殺し屋のおやじに縛られた(義理?)兄弟が殺しあいをする、あの一瞬が精神質量が肥大してかなり好みでした。最後の荒野を犬と共に歩いていくおやじの姿にも何だか哀愁がただよっていていい感じ。ただしちょっと汚い(まぁ意図的にですが)画面が多くちょっとどうかなと。なんだかあまり見ないタイプの映画なので新鮮は新鮮です。


 豪華絢爛なキャスティングがそれだけでウリになる本作ですが、やはりその贅沢さ加減は堪能できます。なかなか粋なのはその豪華なキャスティングが押せ押せなのではなく、控えめな出演者然として起用されている所。決して役者にだけ頼ってる訳ではございませんよ、っていう造りが好感が持てる。話も結構面白くて飽きる事は無い。最後まであんこの詰まったきっちりした破綻の無い展開。ただその破綻の無い磐石なつくりがどうも低調な感を醸し出しているような気がしました。最後のオチも「あ〜そうなるだろうな〜」止まりだし。色々なアイデアを満遍なくエピソード化していこうと欲張ったために消化不足になっている所も多々見受けられます。もっと決め所を設定してここぞという展開にした方が流れの高低があっていいような気がします。オシャレな会話とさり気ないドル箱俳優達の演技を楽しむには十分すぎる作品だとは思いますが。


 ジャン・ジャック・ベネックス久々の新作。夢の世界を表現したかのような映像技術は健在。特に事実なのか虚構なのかそのボーダーが崩れていく部分の巧さはさすが。物語的にはサスペンスなんですがそこ、ここに笑いのテイストが鏤められていて妙な雰囲気をもっています。その笑いも殆どがかなりキツめのブラックジョーク連発。そこに乗っていけるかどうかで評価は別れる所かとも思います。私としては後半真相が矢継ぎ早に明かされる所が難所かと。もうすこし台詞の言い回し、みせ方を違った方法でアプローチして欲しかった。もっと明かされる事実の大きさを意識した落差の有る表現にしてくれればもっと最後が締ったのではないでしょうか。全体的にもう少し細かい造りを大胆にやればもっと筋肉質なサスペンスになったのに、そう感じられた作品でした。

O オー   

 これまで何度もあったシェイクスピアの現代介錯版映画。今までの殆どのそいった作品が内容のみならず台詞も原本を引用していてどうも古臭い感じが拭えない。わたしはそういう感想をもっていました。本作はそれ程古い感じは無くむしろわざと今風のスラングを連発していて、それなりに見れるといった感じでした。話は分り切った展開だけに気をつけなければならないのはキャラクターの作り方だと思います。しかしどうにもそれが上手く無い。ジョッシュが悪役に回っているのですがこれがあまり板に付いていない。むしろ黒人の彼と入れ替えた方がきっちりまとまったような気がするくらい。時代的に無理だしそれを狙っているのも重々承知ですが。あと極私的にですがヒロインが全くと言っていい程魅力に欠ける。この辺ももっとキャスティングに気を使って欲しかった所。やはり今まで通りシェイクスピアモノは成功しないというセオリーに並ぶ結果になった作品でした。