この映画はリース・ウィザースプーンを主演に据えた時点で勝ちです。彼女の微妙に不細工で、でも力強く誰からも共感を買える希有な個性が、この作品の根幹となるエルのキャラクターと見事にマッチしていて、見ていて気持ちいいです。金髪で美人な女優さんなら沢山いますが、この役所は彼女しかなし得ないと言う程ハマリ役。後半になるにつれて、思慮深くいい女性の顔になって行くあたりも見所と言えるでしょう。お話はアメリカの典型的なサクセスストーリーですが、きっちり定石を踏んでいるのでハズレ無しって感じです。アメリカ映画の御都合的で細かい部分は置いてけっ!の精神が巧い具合に転がっているパターン。女性蔑視に対してもかる〜く皮肉っている所もニヤリとさせられます。忘れてはならないのはエルのお金のかかってそうな結構可愛い衣装。劇中ではかなり皆に笑われてますがかなり素敵です。とっなかなか見所の多いお腹一杯になれる作品です。途中勇み足かと思いきや、足踏み?みたいなテンポの悪い所が目に付きますが、笑って許せる程度です。含みもどんでん返しも無い、気持ちのいいラストシーンを堪能する映画ですね。


 あの『CUBE』のヴィンチェンゾ・ナタリ監督の新作。あの監督です。で、「こりゃー一筋縄では行かない映画だな、見てやるぞー!」と意気込んで見てしまいました。そりゃ誰だってそうだと思うんですが。これが以外や以外、全くもって直球勝負の骨太のサスペンス映画でした。ホントに以外。2重スパイと洗脳を中心とする騙しあいの物語。結果的にはラブストーリへと展開していくところもニヤリとさせられます。ラストシーンが非常に印象的な作品でした。時代が今一つかめなかったりするのですが、それは映像が非常に美しくシンメトリカルである影響。まー要するに作り手の世界の造り込みが良く出来ているという事でしょう。付け加えて細かい設定や味付けはこの監督の持つ独特の味付けがあり素敵です。特にメカ系の小道具の描写が私のセンスをチクチク刺激してきました。衣装に関しても細かいとこまで神経が行っていると感じます。正直言ってこれ程実直な作品を見せられるとは思っていなかったので、劇中は感じられなかったのですが、かなり高度に洗練されたいい作品です。ただ一つ難を挙げるとしたらヒロインがルーシー・リューって事ぐらいか。私なら彼女は助けません・・・。


 ファンタジックホラーとでも言うのでしょうか?こういう分野は最近トンとご無沙汰でした。いわゆるトワイライトゾーン的お話で私的には結構好きな部類に 入ります。80年代のPCゲームにはよく見られたシナリオですね。お化けでまくりの人死にまくりのお話で、もぅなんか吹っ切れた面白さがありました。 とにかくテンポが良い。ハードロックに乗せてバンバン話の進むホラーってのも凄いと思います。でっ結構カッコイイ映像で乗りよく見れました。後半から 急激にファンタジー色が濃くなっていき、最後には悪魔まで出てくる始末。まぁこういう物語のよくあるパターンな犯人?なだけにちょっとニヤリとさせられます。 エンドの見せ方も古めかしい感じでアリですね。ちょっと後半のネタばらしのあたりの物語運びが性急過ぎるきらいは有ると思います。確かに考えるまもなく 矢継ぎ早に見せたかったのかも知れませんが、もっと全編通しての見せ方を考えて欲しかったところ。そうすればもっともっと楽しめる良い作品になったの ではないかと残念な感じはしました。

火山高    

 魁 男塾!たす風魔の小次郎、それにドラゴンボールのテイスト少々。そんな感じの作品です。そういってしまえば大体内容が分かってしまう。お話的にはそんな感じです。それ以上でもそれ以下でもない。でも中々勢いがある。と云うより生命力に溢れているといった方が正しいかもしれません。とりあえずこういう世界観を実写で表現してみよう!やっちゃえば何とかなる!的な、思い切りのよさがあります。そこは非常に好感が持てました。映像も中々クオリティー高く仕上がっていて、一昔前の邦画なんかとは比べ物にならないくらい見れる作品だと思います。ストーリー自体に殆どオリジナリティーが感じられないのが惜しいところ。もっと奇をてらった内容でもこのパワーなら押し通せたのではないかという気がします。その辺りはもっと一山越えた日本のアニメ、漫画を参考にして欲しいと感じます。個人的に主の軽いキャラクターがいい感じだなと。一番驚いたのはわざわざ日本語版のために画面表記などを作り直している所。国内で手を入れているらしいですが、こういった試みもアジア圏という大きな市場では、必要な商品構成になってくるのかもしれません。そういった面でも見るところの多かった作品といえます。


 スコセッシ渾身の怒涛の3時間作品。長いよ、ちょっと。まぁしょうがないかな、と思わすほど濃ーい内容。ベースになっているのは日本人にはトンと馴染みの無い移民による人種摩擦。全く渦中に無い我々には「そんなの目くそ鼻くそ」って一歩引いた目で見れるので、それはそれでお話が冷静に見て取れるので有利かなと。兎にも角にもダニエル・デイ・ルイスの演技が凄い。鬼気迫るってのはこう云うのを言うのでしょう。熱気が伝わる程の目線に圧倒されました。今までの彼の演じたキャラクターとは一線を隔すものに仕上がっています。凄い。その凄い演技が作品自体を牽引しているので3時間を感じずさらっと見れる感じがしました。って言っても不味いところも多々あり。まずミスキャストとしか思えないディカプリオ。彼の演技の良い悪いは関係なく、これ程顔の売れた俳優をあの役どころに配すのはおかしいと思います。所詮この映画はダニエル・デイ・ルイスが主人公。ディカプリオ演じるところのキャラクターは引き立てやくに過ぎないと私は感じました。なのでもっと無名で灰汁の無い俳優を据えるのがいいと。あとディカプリオが急激に復讐心に駆られる辺りもちょっと無理が感じられます。今まで楽しくやってたのに、殺すならもっと良い場面があるのに、そんな疑問ばかりがのこります。せっかく長い上映時間なのだからもう少しその辺りをうまく配分して欲しかった。そうすればもっともっと良い作品になったのに。

K−19    

 久々の潜水艦モノ映画。この映画は良く出来ています。実話を元にしているという大きなバックボーンに甘んじることなく、きっちり映画として創り上げてやろうと云う気合が画面からヒシヒシと伝わってきます。特に若手の演技が凄い。胸の奥が締め付けられるかのような焦燥感、やるせない思い、閉じ込められた気持ち達を見事に表現しています。ハリソンフォード、リーアムニーソン両氏はちょっと負け気味かな。これほど力の有る演技を引き出せた監督はまた凄い。女性だからこそ出せる男臭さと云うのは、こういうモノなのかもしれません。映画としてはかなり面白い作品である事は間違いありません。が、やっぱりちょっとお話が重たすぎる・・・。正直見終わってからかなり引きずってしまいました。もう一回見たいとは間違っても思いませんでした。この辺りは好みの問題。ダークサイドな気分に漬かりたい方にはお勧め。


 ビンセント・ギャロ久々の新作。『バッファロー66』とは真逆の役どころを意欲的にこなしていると感じた作品でした。品のいい役所でもありなんだなって。内容は中々強烈。リビドーを操る新薬を研究中に自分を人体実験の対象にした二人が、その副作用で性交中に相手をかみ殺したくなる衝動にかられる・・・って事だと思う。っていうかそういう説明は殆ど無く類推するしかない。断片的な情報から見る側は全体像を想像する、そこに製作者側とのやり取りを形成しようとしているんだと思う。まぁそれはそれで有りだと思います。こまごま説明されるよりは深みが増す要素かもしれませんし。絶望に苛まれる主人公と、欲望に身を任す女性の対比が凄くインパクトがあり素敵でした。出演者全員のちょっと古めかしいファッションもカッコよくて心象的シーンとあいまって中々スタイリッシュです。音楽の使い方も堂に入ったもので緊迫感を巧く演出していると思います。こういった作品は常としてシナリオの好みが作品の好みに直結するものです。私はどちらかというと苦手な方なのでこれぐらいの評価ですが、陰鬱なストーリーが好きな方にはお薦めしたいと思います。


 アルトマンが欧州スターを総動員。裏の『オーシャンズ11』って感じ。まー豪華な総勢20人近くの集めも集めたりの濃い俳優達が、2時間17分の上映時間を 余すところ無く使って演じまくっています。流石にアルトマンと思わす手法が沢山。うまいと思わされたのは主人と召使に関係を分断し、それぞれがパラレルに 進行しつつも一階と地階を繋ぐ階段によってクロスオーバーしていくという複雑なお話の造り。華やかで楽しげだがやはり何処か皮肉めいた上流社会の人々と、 暗い地下で献身的だが強い意志をもっている召使達の関係が、いい対比を見せています。大勢の出演者達に最初は戸惑いますが、それ程目を皿のようにしなければ 分からないという程難しい人間関係でもないし、それを分かり易く見せる手腕はやはりアルトマンの才覚の高さ故でしょう。シニカルなウイットにとんだ溢れ返る ような台詞群が、非常に耳心地いいです。ただシナリオがそれこそエリュキュール・ポワロでも出てきそうな古臭い推理物のような感じで、あまり好みではありませんでした。 犯人の動機にも、殺害方法にも今一納得できないものもあり、そこまで盛り上げておいてそれはちょっと肩透かしかな?と思う所でした。かなり反則ですが このまま犯人がわからないまま終ったらそれはそれで面白い映画になるかもと思ったりもしました。それではちょっと寝覚めが悪すぎかな?


 アリーヤの遺作となってしまった本作。また内容がアリーヤに始まりアリーヤに終わると言っていいほど、彼女の魅力が前面に押し出されているだけに辛いことこの上ないです。回想シーンのオンパレードにより各個人のパーソナリティーを設定していくつくりは、完全に前作を継承しています。お話自体も手前勝手な理屈を押し売りするのは変わらず。何故バンパイアたり得るのかって所は全く触れず、とにかくこういう事なんだと納得するしかない。もっと掘り下げれば面白いテーマになりそうなのも前作同様。まぁそこは置いといてもいいと思わすぐらい映像がいい!前衛芸術を思わすエキセントリックな肢体を題材にした映像美は秀逸です。レスタト率いるバンドのPVもいいし出演者全員の衣装が凝りに凝っていて素敵です。特にやっぱりアリーヤ。彼女のルックス&強烈な衣装は凄い。思わず見惚れるほど妖艶で、背筋がぞっとする程美しかったです。後半これでもかとCGを使ったシーンが続きますが映画というよりは舞台芸術に近い絵的なレベルの高さはかなりのものです。クイーンの最後の鬼のようにパーティクルを使ったシーンは圧巻です。内容はこれといって普通ですが出来れば映画館で見るべき作品だと思います。最後にアリーヤの冥福を心から祈りたいと思います。

凶気の桜   

 窪塚氏は一体どれだけ仕事をしてるんだと思わされるほど最近出ずっぱりですね。人気があるのは分かりますがホント凄い。そんなことはさておき何かとワイドショー的に取り上げられる機会の多かった本作。日本、国家、ナショナリズムなんてお堅いお題目を若者が解き明かす、的な映画では無いです。つくりは単純にヤクザ映画です。それも相当古式ゆかしい。斬ったはったの騒動を描きつつもそのスパイスに先ほど言ったキーワードを使っているだけで、それ程内容に新規性があるわけでもありません。実際主人公の台詞群は支離滅裂で、何がイデオロギーなのかさっぱり分からないし。そんな所に注視しているとノリだけで誤魔化される恐れのある映画ではあります。それが狙いか?とも邪推したくなります。だから単純にヤクザ映画だと割り切るとそこそこ楽しめると思います。映像もカッコイイ所は多々ありますし。高橋マリ子さんは素晴らしく美しいし(それこそお話と関係無い)。もっと関係ないかもしれませんが劇場には金髪のお兄さん、お姉さんが団体さんで見に来ていらっしゃいました。劇中、主人公にバンバン殴られてる系の人たちです。どういう勘違いでこういう客層になっているのか訳が分かりませんでしたが、個人的興味として全員に聞いてみたかったです。「この映画見てどう思いました?」って。


 ジョセフファインズとヘザーグラハムがどちらもハマリ役でそういった配役の面からいえば結構成功していると感じる作品でした。過激な性表現がウリになっているお話ですがどっちかというとサスペンスかな?って思うシーンが沢山あります。あれってネタフリか?と思わすカットも多々ありますし。最後はそれなりにどんでん返しもまってますし。でもそういう構成が逆に映画の主題である「運命の出合い」って所を邪魔しているように思いました。そこをもっと掘り下げた方がこのキャスティングには合っているような。無理に盛り上げなくてもって思ってしまいました。しっとりと男女の関係を疑念や懐疑心というテーマで普通に描いた方が映画としてはまとまったような気がします。関係ないですがジョセフファインズは最近こんな偏執狂でちょっとやな感じのキャラが多いですが、私的には『マーサミーツボーイズ』のような軽い三枚目的な役所が好きですね。意外に似合っていますし。

金色の嘘   

 ユマ・サーマン、ニック・ノルティー、ケイト・ベッキンセールという割と有名所を集めて、非常に広く知られている原作を映画化したわりにはあまり日本では話題になっていない作品。ちょっと気になったのはユマサーマンが珍しく恋に溺れる女性役でどうも彼女には合わない役柄のだと思えた事。才色兼備と云う設定らしいですが私にはこの人は愚かな女性に見えました。最後にあっと驚く逆転劇をやってのけるのかと思いきやそれも無いし。上映時間自体結構長めで体感時間がかなり長めという映画としてはあまりよろしく無い傾向に有ると思います。というのも全編不貞という事をテーマに同じようなシーンが延々続くのでなんだか飽きてしまいます。いいかんげんにしろと。しかもそこまで引っ張ておいてオチらしいオチなし。見終わった後にはぐったりしてしまいました。話の飛び方や台詞の性急さ加減からして、長大な原作を無理から時間に押し込んだ閉息感が見事にみてとれる典型的な作品と言えるでしょう。

殺し屋1   

 人を殺す事で快感を得るサドの殺し屋と、死ぬほどの痛みで快感を得るマゾのヤクザのド変態合戦を描いたかな〜り濃くて痛〜い映画。絶対にカップルなんかで見に行くと終演後辛くなるので注意が必要な作品です。私は原作漫画のほうも読んでいて予備知識があったので面白くカッコイイと楽しめました。チャチなCGもこの作品ならOKという許容範囲を押し下げる勢いがこの映画にはありました。わりと原作を忠実に映画化したというタイプの造りで、キャラの細かい設定のずれもいい値踏みの仕方だと思います。このエログロ作品を全体的に今風にまとめられている点も評価に値すると思います。ただやはり単行本10冊分の濃い内容を2時間に詰め込んだため原作を知らないと分からない表現も多々見受けられて、それ程致命的なものではありませんが知らなくて見に来た人には分からない部分もあると思います。駆け足で台詞の応酬になるところもありでその辺ももう少しゆっくり見たいと思うところ。映画としては小粒できっちりまとまっているので娯楽として中々楽しめる作品ではあります。