スピルバーグとトムクルーズという、ありそで無かった組み合わせで作られた話題作。かなり鳴り物入りで公開された上に高収益をあげているようで、 今後もこの組み合わせで映画がリリースされるらしい。そこそこ良く出来た作品ではあります。少々長い上映時間を上手く使い分けて分かりやすい サスペンスに仕上げています。最近のスピルバーグ作品に出てきた妙な空気感がありありで、好きな人にはたまらないかもしれません。面白いアイデアを 分かりやすく伝える話運びはやはり氏の得意とする所。流石です。ただ設定の脆弱さがどうにも納得できないレベルにまで達しています。最初の 事件の解決まで見ても「そんなの幾らでもやりようあるんじゃないの?」って思わしてしまうのは無しでしょう。っで結局それがオチになっていますし。 っていうかこの時代の犯罪者頭悪すぎ?いやいやそうじゃない!やっぱり設定に穴がありすぎと思います。あと妙にコミカルなシーンが多い割に 音でビックリさせるシーンなんかもあったりして、今一映画の振り方向はどっちなの?と思う部分が多々ありました。絶対必要ないと思うシーンも 結構ありましたし。興行より作品を取ったと言いたいのかも知れませんが、これでは製作者のエゴだと思われても仕方が無いと思います。最近スピルバーグは こういう作品が多い気がしますが大丈夫なんでしょうか?


 岩窟王です。私は昔からこのお話が大好き。なんだかロマン溢れるって表現がぴったりな感じで。若い方は知らないかもしれませんが『エリア88』とっていう漫画が大好きなのも、この物語をベースにしているからです。いや〜いい映画でした。THE銀幕!これぞ王道って感じの造り。原作は非常に長大な一大作品なので、どうやって2時間にまとめるかが製作者の腕の見せ所。ここが凄く巧く出来ていました。映画的に、絵的に、映えるシーンだけを抽出して、そこにこれでもかってくらいお金を投入。ちょっと笑えるくらい絢爛豪華なシーンにはウットリです。それとは真逆に、牢獄のシーンはまるで舞台劇のように限定した視点で描かれていて、原作のもつ大きな転換期を見事に表現していると思いました。確かに心情的なモノはかなり端折って描かれているのですが、そこは脂の乗った若手俳優の演技力でうまくバーされています。ジム・カビーゼルの前半と後半で見事に物腰まで変わる演技も見事だし、ガイ・ピアーズの徹底した悪役ぶりも素敵です。ラストの辺りは原作と結構違うのですが、これはこれでアリだと思います。お話自体は古いモノなので大きな驚きは有りませんが、全てのシーンをキッチリ作り上げようという丁寧さが見て取れます。全体的に上級の完成度の感じられるいい映画だと思いました。


 まぁ結局は典型的なロードムービーなんですね。地位も名誉も何もかも持っているキャリア女性と、その日暮らしにで即興劇に興じる何も持っていない男が、つかの間の 熱情に身を任せる姿を描いています。全体的に流れる軽いノリのユーモアは悪くないと思います。即興劇のアイデアも良く練られていて楽しい。ただまず場面切換えの テンポが悪いのが問題。そこまで映さなくていいんじゃない?というほんのちょっとの蛇足を感じるシーンが多々あり、全体的につっかかり感があります。もう少し素直に シナリオを楽しませる展開が欲しかった。それと基本的にこれは女性の方から見たお話だと思います。女性のほうが押していっているし。にもかかわらず女性側の環境説明 が一切登場しないのにもちょっと疑問です。男性側の人となりは事細かに説明臭く述べているのに。その辺りがすっ飛ばされているだけに、結局なぜ全て満たされている 女性が刹那的な愛情に溺れていくのか?そして家族と一緒の幸せな場面でも思い出すほど強く惹かれたのかが今一伝わってきませんでした。最後の駅での煮え切らない二人の 心理もちょっと理解が及ばない感じ。もう少し述べたいテーマを見つめて演出を考えて欲しかった。


 コメディの名手、『奇人達の晩餐会』のフランシス・ヴェベール監督の新作。恐ろしいほどシニカルな設定に翻弄される人々を面白おかしく描きつつきっちり主題を匂わす手法はやはり流石の一言。聞くに堪えない下ネタも確信犯的差別発言もそれぞれ大きな意味を持った監督からの訓辞だと思えば腹も立たない。人は一人一人皆違う生き物で価値観はその人のみが持つ大事な個性なのである、っていう少々堅苦しいテーマをこんな面白いストーリーに味付けしてしまうその考え方が稀有な才能だと思います。誰も考えつかないアプローチの仕方だと。ただ上映時間が異様に短く、伝えたい事を伝えてとりあえず終わりっていう感があるのは残念なところ。『奇人達の晩餐会』であれほどしつこく描いていた氏のわりにはあっさりしすぎで、もうすこし色々な立場の騒動が見れても面白かったかもしれないと感じましたね。その辺りは次回作に期待ということで。

モンスターズインク   

 もはやピクサーの技術力、というより作画センスは無機物に生命を与えその生命体が演技をきっちりこなすまでに至っています。素晴らしいイマジネーションの世界を堪能できるいい作品です。人間とは全く違う形状のモンスター達が時には笑い、泣き、そして激昂する。その微妙な心の揺れ動きをものの見事に表現していて感動しました。特に一つ目のマイクが雪山でサリーに『付いて行ってあげたいけどそう簡単に許せるもんか』っていう心情を目の動き一つで表していた所が凄くて必見です。もちろん絵だけで無く話しもいい。子供の泣き声がエネルギーとなり異次元を繋ぐドアを介してエネルギーを得るなんてだれ考え付くでしょう?正直その想像力、創造力に驚嘆しました。後半の盛り上がりはかなりなもんです。少々ニュートラルからは子供よりに造ってあるのでもう説教臭く造っても良かったのかなって気はしました。まぁこの辺は好みによりますが殿堂入り間違いなしの快作です。


 久々にヒラリースワンクを見ました。やっぱり演技力には瞠目に値するものがありますね。強かで飽くなき挑戦を続ける女性を好演しております。もっと沢山の映画にアサインされるべき女優さんだと思うのですが。それはさておきお話は社会科の授業でちらっと触れた事のある首飾り事件の正確な再現。多分かなりの量の文献等に基づいた映像化で感想としては、良く出来てるなーって感じです。当時の雰囲気と言うか臭いと言うものを良く伝えていると。ただ映像化に特化し過ぎたためかあまり話の高低がハッキリしておらず資料映像のような感が強いのが残念。それこそ社会科の授業で使えそうなくらい。もっと映画然としたエピソードやシーンを盛り込んだ方が映画としては盛り上がったような気がします。


 リンチいわく「この作品は伏線が何処とどう繋がっているとか、あの謎がどうとか詮索して欲しく無い。劇場でそのシーン毎の表現をその場で楽しんで欲しい。」だそうです。いや、あなたの映画は殆どそんな感じでしょって言いたい。確かに見終わってみるとそんなに長い時間が経っている(劇中の実時間)訳でも無く、話も割と単純(だと思う)。時系列をちゃんと繋ぎ直せば数日間で済んでしまう。それにしては意味の分からないカットが余りに多くなんだか狐に摘まれた感じ。結局解決しない、というより意味さえ分らぬ謎が無造作に転がっており、正直自分が全体の何バーセントこの作品を把握しているのかも良く分かりません。でもこれはこれで良いんだと思います。リンチのリンチらしい作品を久方ぶりに見た気がします。こういうどのシーンをとっても監督の息吹が感じられる作品は稀ですし、個性を売り物にしている監督でもそうそうこういう濃い作品は撮れませんから。後は個人の好み次第という所でしょう。


 トレイラーを見て感動大作を期待して見に行くと大変な肩透かしに合います。そんな警告を人に薦める時には言いたい、そういう言い方が正しい作品でした。ハリウッド映画のように派手な演出は全く有りません。山も無く谷も無く、フリも無ければ当然オチも無い。淡々と粛々と続く物語。しかして私は個人的に結構楽しめた作品でした。これはイタリアの映画なので当然劇中はイタリア語です。私はイタリア語は多分単語一つさえ満足に分りません。でもこの作品に出て来る人々の心の葛藤、苦悩が言語を超え画面も超えて心に訴えかけて来るものが有りました。ほんとに素晴らしい演技で監督であり主演もこなすナンニ・モレッティ氏が特に凄い。心の微妙な揺れ動きをこれほど見事に表現するのはちょっと尊敬に値します。最後の海岸で家族が吹き出して笑いはじめるシーンが私は好きで私もなんだか可笑しくなってしまいました。なんだかフワフワとした捕らえ所の無い映画ですが欧州独特の映画の持ち味が存分に出ており、そういうモノが楽しめる方にはかなりお薦めです。

モンキーボーン   

 ブレンダン・フレイザーがまさにやるべき役所をきっちり演じた、そんな感じのアメリカン典型的コメディー。彼にはこういうB級映画が良くお似合い。いやっいい意味でね。モンキーボーンに乗り移られた彼が起こす騒動がまさにアメリカ的で、悪夢を製造する薬品っていう設定もなんだかアメコミに欲で適そうな表現。どうも『マスク』と『バットマン』を足して4で割ってパワーダウンした所をブラックジョークで埋める、そんな感じでした。死の世界のモンスターたちやセット等のセンスはそんなに悪く無いので中々楽しめる。意外にウーピーゴールドバーグやブリジットフォンダ等最近では見かけなくなったいい感じの傍役も揃えていて、そう云った楽しみ方もありかと。まあ作品としてパワー不足の感は否めないのでそんなにお薦めできる映画じゃ無いのは間違い有りません。


 トレーラーがなんだかミステリアスで気になっていた作品。母を訪ねて三千里の女の子版か?とか思っていました。どうもこの作品は乗れなかったというのが実直な感想。一番の理由はクリスティーナリッチがそれほどお父さんを探すために血眼になっていないところ。どうも安穏とかまえてただただ日常を送ってるのをみて「はやく探せよ!?」とツッコミたくなるシーンが目白押し。パリでのシーンはあれの三分の一くらいの長さでも丁度いい感じがしました。なんだかラブストーリーだし。その他にも彼女は歌が物凄く上手い役のはずなのに全くそれが伝わってこず。この辺の見せ所が悉く肩透かしなのが作品として低調な感を受ける大きな要因だと思われます。まぁジョニーデップは野性味に溢れていて中々魅力的ではあります。あと一番光っていたのはケイトブランシェットでしょうね。彼女の妖艶な演技は非凡な才能を感じさせられます。これからドンドン色々な役どころに挑戦して欲しいものです。そこぐらいしか見るところがありませんでした。