猟奇的な彼女    

 去年くらいからでしょうか?勢いに任せたモノではない、純然とシナリオと技術力で見せられる韓国映画が目立ってきたのは。この作品は後者、映画という媒体としての技術力が極端に高い映画でした。ウソかホントか「スピルバーグがリメイク化権を・・・」ってのも頷けるものでした。とにかく映画が好きで、沢山見ていれば見ている人ほどはまり易い絶妙な落とし穴が、山のように仕掛けられています。今までのラブストーリーを逆手に取ったその手法はホントに新規性に溢れていました。尚且つ画面からは「何勘違いしてるんですか?私たちは普通のラブストーリーを作ってるんですよ」っていう皮肉めいたものまで見えてきます。そうっこれは非常に単純なラブストーリーなんです。でも巧いなホントに・・・。そして主役を張るチョン・ジヒョンの瑞々しい魅力が素晴らしい。黙ってれば物凄く美人なのに、喋りだすと凶暴というこの難しい役どころを見事に演じきっています。っていうかまるで別人のよう。この人がいなければ、この映画は成り立たないと言ってもいいくらいの質の高いタレントです。正直言ってここまでクオリティーの高い映画を見せ付けられちゃー邦画の出る幕無いと思うのは私だけ?そんな危惧さえ感じてしまう素晴らしい完成度を誇る快作でした。


 トレーラーがかなり素敵で全く話題に上がらないながらも私的に非常に期待していた作品でした。期待を裏切らない爽やかで丁寧な造りの良作だっただけに評価も自ずと上がってしまいます。ドジなでケチな強盗が捕まった刑務所からミュージカルをしながら逃走する計画を立てるが女性警務官に恋をし・・・。っと書いてしまえばこれだけの非常にシンプルなお話。だから見せるのはキャラクターに特化しています。たくさんのあくの強い囚人たちが泣いて笑って歌う。上映時間をキッチリ配分して、それぞれのキャラがある程度共感できる所までキチンと掘り下げています。こういった映画にありがちな、ともすればドッチ付かずで散漫になってしまいがちな内容との境界線を見事に読み切りギリギリの線で纏め上げている所に拍手を送りたい。内容はかなりコメディーよりでそれがまた単純に可笑しいシーンが多くて笑ってしまいます。こうも何も考えず笑ってしまう映画も珍しいなと思いました。皆の悪意を一身に背負ってくれる見事な悪徳看守もいてシメル所はきっちりシメル。イギリス映画特有のテンポの遅い舞ったりとした感じはありますが全体として非常に品がよく全てのシーンに意識が行き届いた完成度の高さが高評価の所以です。


 泣き疲れました・・・。そんな感想が一番ぴったり来る映画でした。なんだろうこの感動は、正直言って反則だと思うくらいに。言いたい事、伝えたい事は沢山あるのに素直になれない。向かい合えば思っている事と違う台詞が口をついて出てしまう。そんな男女の心情が非常にきめ細やかに描かれています。まず設定がいい。男は売れないコメディアン。妻がどういう状況にあっても笑いを届けなければならない彼の立場が、物語りの整合性を挙げるのに一役買っています。妻は重病ながら夫を裏から献身的に支える。でもその姿を見られまいと、いじらしいまでの強がりで対抗する。この二つの要素が上手くかみ合っていて、どんどんお話を加速させていきます。またイ・ヨンエの演技が素晴らしい。病を患いながらも気丈に振舞う薄幸の女性を熱演しています。ホントに体が悪いんじゃないかと見まごう程。恐ろしい程の強い精神を持った女性像が、彼女の飛びぬけた美貌、抜けるように白い肌とうまくマッチしていると思います。しっかし相変わらず美人ですね、惚れ惚れしてしまいします。そして大きなテーマとなっているラスト・プレゼント!一体ここまできて何が最後の贈り物なのか?これにはホントにやられました。まさかここまできて妻から夫にそんな贈り物なんて・・・反則です。泣け!って言われているようなもの。そりゃ泣くって。最後の夫のステージのシーンから最後まで恐ろしい程感動させられました。確かにちょっとフィクション過ぎて突っ込みたくなるようなシーンも少々見受けられますが、まぁそこは目をつぶってもオッケーでしょう。素晴らしい作品でした。


 日本では全くメディアに取り上げられず、知人に「面白かったよ!」って言ったら「え?やってるの?」って言われてしまいました。 そう、やってたんです。そして凄く面白かったんです。脚本が良く出来ています。城とそれを守る壁をモチーフに、色々な局面で現れる 物理的、心理的な段差を表現していると感じました。外界と刑務所を隔てる壁、親子の壁、身分の壁、価値観の壁等々、どちらが守るべき もので、どちらが守る側なのかが常に移ろう。そんな深い精神性を孕みつつも、スカッと爽やかなアクション部分もキッチリ作ってある。 そんな欲張りな試みが両方巧く実っている作品です。徐々に鬱積されていく囚人達のパワーが画面からひしひしと感じられ、それが 爆発する瞬間の描き方が見事です。レッドフォードの男としてのカリスマが、兵士達を統率していく丁寧な表現も見ごたえ 十分。ちょい役ながらデルロイ・リンドもいい仕事をしています。多少最後の反抗作戦への序曲が大雑把な気もしないではありません が許容範囲内でしょう。これぞアメリカ映画っていうモノを堪能できる素晴らしい作品だと思います。


 今まで何度も描かれてきた親子愛をテーマにした典型的作品。終始暗い画面造りに努めておりトム・ハンクスのしかめっ面とあいまって地味な印象。途中から 親子の間がうまくいき始めた辺りは中々テンポ良く気持ちのいい展開になります。あのあたりは昔の良作『パーフェクトワールド』を髣髴とさせていい感じでした。 あと最後の雨の中の銃撃シーンのサイレント処理は中々ピリッと緊張感が合って素敵です。 ただし他のところは当たり前のギャング映画を当たり前に作ったって感じでどうも楽しめなかったです。もっとも決定的なのはオープニングの息子の言葉が 余りにラストを予想させすぎる要素になっていると言うこと。つまりはネタフリが分かり易過ぎるってことです。自分の父親を誇ることのできる息子と言うテーマが 一番顕著に表れている映画の肝とも言うべきこのフリオチ。それをオープニングとエンドでやるからにはもっともっと気を使って欲しかったところ。もぅ 海辺の家に入ったトム・ハンクスに「うしろー!」って叫びたくなってしまいました。っていうかやり手の男なら「気づけよ・・・」って所なんですが。 こういう構成にするにはまだまだ熟慮が足らないという印象。


 服飾のインディーズブランドを造るべく奮闘する若者の姿を描いた青春映画。いわゆる青春映画という響きに非常に合っていると感じた作品でした。若者ゆえの勢いと 感性で世の中を登りつめてやろうというギラギラした欲が画面に色濃く焼き付けられていて切ないです。粒子の粗い画面が光のコントラストを強く映し出していて内容と 合致した映像表現だと感じました。服作りに没頭するもの、腰掛に立ち寄ったものそれぞれの思いが、中々小気味良く台詞回しに取り入れられといて心地いい。ただ ちょっと現実世界にはありえない古式ゆかしい青春映画的展開には新規性が感じられなく残念にも思いました。先輩が売れっ子デザイナーだとか引き抜きだとか、どこにでも ある普通のお話の内容ちょっとゲンナリ。それ程お話を作らずに持っていけるほどのキャラクター作り、状況設定が出来ているだけにもっと空気感だけで見せる展開が 望ましかったように思います。あと、これは極私的な感想ですが最後の鋏を使うシーンは自分もモノ造りをやっているだけに心を切り刻まれるような気がしました。 全体的に表現方法として高いレベルなのですが、もっとお話に気を使って欲しかった一本でした。


 素晴らしく若さの感じられる気持ちのいい映画です。この監督の前作も中々楽しい作品でしたが本作もいい感じ。同世代(チョッピリ上ですが)の価値観というか道程が実直に伝わってきて「分かる、分かる」的、妙な親近感があります。マトリックスとE.TとID4とバックトゥーザフューチャーのおいしい所だけ抽出して強引に若さで丸め込んだって感じでしょうか。プロットを聞いたりスチールを見たりしたところから受けるパックたっていう感じではなく純然たるオマージュとして仕上がっているところが好感が持てます。元来きぐるみやセットに頼っていた日本映画的手法を完全に捨て去りブルーバックとCGによって構成されたシーンの数々は結構良く出来ています。もともとCGデザイナーであった監督の力の見せ所ってことなんでしょう。『ジュブナイル』でも好演が光った鈴木杏は今回も見事な演技。感情の表現が非常に豊かで今後の成長を期待させてくれます。苗字の鈴木がここに来て世界進出の助けになろうとは誰も想像出来なかった要素ですがホントに英語圏での活躍を楽しみにしています。金城武は捨て置こう。正直言えばSFの設定に???な所も多々あります。まぁそのあたりは若さとして目をつぶるとしましょう。今後この監督がどういった活躍をするかは非常に興味があります。がんばってほしいものですね。