欧州版『トリプルX』です。なかなかキッチリ出来上がっているアクション映画だと思います。まずキャラクターの性格付けが巧く仕上がっており、それに頼るだけで2時間もたせられるぐらい。ストイックでめっぽう強い、でも女性には弱い。そんなゴシックヒーローに必要なベタベタ設定を、今更ながらキッチリ見せられると逆に新しく感じるから不思議。中々魅力的でいいキャラに成長しそうな予感。車の運転ノミならず格闘、潜入、銃器の扱い等々に精通している、元軍人という欲張った設定にしたのが勝因かもしれません。またヒロインのスー・チーのくるくる変わる表情も男臭い話に花を添えています。ちょっと人身売買云々のストーリ自体に無理があり、そこはかとなく感じるB級なにおいが気になるところ。と言うより欧州はアクション映画には、なんだかコミカルな要素を加えなければならないという不文律でも存在するのでしょうか?なんだかリュック・ベッソンが諸悪の根源(失敬)のような気がするんですが・・・。せっかくのいい題材が台無しなので、お願いだから止めて欲しい。『トリプルX』同様パート1の役目は完璧にこなしているので、速やかに続編の制作に着手して欲しいものです。出来れば彼は手を加えないで欲しい。


 文化大革命の影響で再教育させられるべく、山奥に送られた青年二人と、山の暮らししか知らない純朴な少女とのラブストーリー。掃き溜めに鶴の女性に、知性と品性を授けようと文字と文学を与えたばっかりに、結局手元から離れていってしまう。まぁ神話の時代から語り継がれる物語によくある展開。設定自体はド田舎の山間の村なのに、それを感じさせない凛とした美しい風景描写が見事。そこに『ふたりの人魚』のジョウ・シュンが、相変わらずの瑞々しい若さを輝かせています。最後の水に埋もれた町にフラッシュバックする、セピアの世界も中々美しく、映像的には非常に見るべきところの多い作品であります。ただお話があまりに淡々としているのが難点。三人の心情をまるで見えざる4人目が語っているといった台詞運びで(もちろんこれは未来の自分が、ストーリーテラーになっているので当たり前だが)どうもその時、その場所にいる彼らの生の声が聞こえてこない。いっそのこと過去を振り返るという設定を全く無視しても良かったんではないか?と私的には思いました。この上映時間ではそれぐらいの割り切りも必要だったと思います。

トンネル    

 ドイツ発、殆ど実話に近い大脱走21世紀バージョンって感じの作品。この映画は素晴らしかった!何が素晴らしいって久しぶりに映画的な映画を見れる所。THE 映画。これぞ映画っていう古式ゆかしい雰囲気と言うか臭いがそこら中にプンプンします。かなり長めの上映時間を、余す所無く自由に向かい邁進する多くの人々のキャラクター作りに活かしつつ、トンネルという現物に有り余る力をぶつける姿を瑞々しく描いています。事あるごとに「とにかく掘ろう!」と言う主人公達がすごく素敵でした。本当に沢山の人が出て来るのですが、その一人一人が大きな人生の重荷を背負っていて、自重で圧壊しそうな姿が真に素敵でした。劇中二つ程大きな非常に素晴らしい見せ場があります。一つは壁に挟まれ阻まれながらも言葉をかわす恋人同士のシーン。今一つは最後の逃亡シーン。特に後者は私、映画という事忘れてしまう程ハラハラしてしまいました。知らぬ間に握りこぶしを作ってしまいつつ。それ程よく出来ているということでしょう。そういうグッと来るのも最近の映画では無かったな〜と、しみじみ思ってしまいました。サスペンス、ラブストーリー、アクションと凄く欲張りに沢山の要素を詰め込んでいるのですが、その一つ一つが見事に表現し切られている点も非常に満足感があります。最後のシーンで泥だけになった、でも凄く美しい人々の顔が非常に印象的です。単館上映でそんなにメディアにも取り上げられず、題名も『トンネル』と地味ーな感じですが、是非とも多くの人に見て欲しいと願う作品でした。自由に向かって突き進んだ先陣達に敬意を表したいと思います。

デゥラス 愛の最終章    

 高名な小説家の実生活を描いた純粋なラブストーリー。こんな、それこそ小説的な出来事があるんだってことだけで結構みれます。激しくぶつかる女と男の気概が画面からかなり熱く伝わってきます。終始物憂げな画面作りも中々主題にあっていてレベルが高いです。ただこういう非常に少ない人数の心をつぶさに描いた作品は、誰かの心情に入り込めるかどうかがその作品の良し悪しに繋がってくると思います。正直私はダメでした。今一誰の心情も理解し得ないものばかり。それ故二人が延々と続ける激情の毎日を何処か冷めた目で見てしまいました。多分これは女性が女性の視点になってみるのが正しい見方のように気がしました。


 中々良く出来たシナリオです。ほんの一瞬交差しただけの全く違う人生が、複雑に絡み合い進んでいく。善良な市民が自分の人生に剣を突きつけられた時、どのような行動に出るのか?どれほど人は凶暴になれるのかを分かりやすい例を挙げてキッチリ表現しています。題名のチェンジングレーンというのも、事の発端が車線変更だというのも、練りに練ったりって感じですね。ちょっと鼻につくぐらい。優柔不断で悪に染まりきれないベン・フラックと、人生を取り戻すためには何も厭わないという姿勢のサミュエル・L・ジャクソンが良い対比を見せています。二人の崖っぷちに立たされた感が画面から色濃く感じられて素敵です。セカンドのキャスティングも中々通好みで見逃せないところ。トニ・コレットの未練たっぷりの演技もいいし、ホントにちょい役なのに存在感のあるウィリアムハートもいい。細かいところを言えば最後のオチがもっとしてやったり感が欲しかったところ。ここまで引張ったんだからもう少しガツンと言わせる仕掛けがあるともっと気持ちよくまとまったような気がします。あと結局は白人と黒人の差別に上に物語が乗りかかっているのが気になります。いっそのこと白人と黒人の位置関係を全く逆で作ってみても面白かったかも。様々な面でアベレージの高かった作品だけに、欲も言いたくなるという所です。

トリック   

 ついに劇場版まで公開になった堤氏渾身のトリック。まぁいつもどおりです。荒唐無稽の設定とケレン味たっぷりの演出。訳の分からないキャラクターのオンパレード。っていうか普通の奴は全く持って出てこない。それもいつもどおり。多分テレビ版を見ていない人なら謎の連続だと思われる、独特のお話の進め方にちょっと辟易。というか単純な問題なんですが台詞が聞き取りにくい。あまり滑舌が良い人ばっかりでも違和感のある世界観なんですが、あれほど音声の大きい劇場で聞き取りにくいのはちょっと致命的かと思われます。フリオチが極端に早い展開だけに、一瞬聞き取れないとそのまま済し崩しに意味わからなくなるし笑えない。この辺はテレビ版でも言われていた事だけに気を使って欲しかった。これも前から言われていた事ですが、トリックを暴く事がお話の主題になってきており、ちょっと強引に種明かしにストーリーを結びつけるのもどうかな?と思います。この辺りは好き好きなのでしょうがない所かもしれませんが。あまり深く考えずバカな映画を馬鹿馬鹿しく楽しむ。そんな軽い映画なのは間違い有りません。


 やっぱり山田洋次氏は巧い監督だなと思わされた一本。何気ないシーン、何気ない台詞にもきっちりと人の生きた心情が表されている。そんな臭いまで伝わるような感情の 表現が非常に豊かでした。監督御得意の御涙頂戴シーンは何故かこの映画にはあまり出てきません。普通の日々、普通の会話が殆どです。でもなぜか心に響く。今までの 氏の映画より、狙いや気負いが私的にあまり感じられなく無く、フワフワとした空気感が良く出ていて好きでした。皆から後ろ指さされながらも自分の信じるもの、愛でるも ののために頑張る朴訥な男が、いじらしく素直な感動を与えてくれます。「ただ愛のために」っていうキャッチが女性に対する愛だけではないところが好感が持てました。 一兵卒として矢面に立たされる男たちのやりきれない会話も中々聞き所。といっても、もろ手を上げて誉めれない細かい所も多々ありました。一番まずいなと思ったのは ナレーション。成長した清兵衛の娘が全てのシーンで説明ナレーションを入れてくるのですが、正直言ってちょっと五月蝿いです。そこまで説明されなくても分かるし、 みる側にもっと想像させるような造りにするべきだと思います。それと最後のエピローグも必要ないように感じました。その後どうなったかなんてどうでもよくて、そこは 類推させるのが基本だと思います。簡単に言うと丁寧に作ろうとするあまり蛇足になってしまっているという感じ。もう少し聴視者を信用して欲しい。

DOLLS   

 北野武の新境地を見出した作品といってもいいでしょう。ウットリとするほど色彩豊かな日本の風景の中進行する、これまた艶のある美しく色情豊かな ショートストーリー。どれもこれも北野武ばりで痛く苦しく辛い物語ばかり。でもその美しい画面の造り方の功名でその独特の毒が余り伝わってこず、 御伽噺のように洗練された印象で表されています。色彩構成のように計算された色の配置が見事で感嘆します。お話のアイデアも中々古臭いものから 先進性のあるものまで取り揃えておりお得感があります。特に紐につながれた二人の人生の表現には正直驚嘆を覚えるほどでした。こんな形で男女二人の 繋がりを表現するとは!中々のものです。だだまぁお話的にそこ等ここらに無理があるのも事実。もちろんそれを言い出すときりの無いシナリオですがね・・・。 絵本を実写にして現代的にアレンジしたって感じでしょうか。もう少し(ほんのもうすこしね)現実味のあるお話でこのビジュアルのレベルを保つ事が出来た らそれはそれで素晴らしい映画になったと思ったのですが。無いものねだりでしょうか?


 個人的に大好きでもっと有名になって欲しいと願う、聡明マッチョのビン・ディーゼルが『ワイルド・スピード』のスタッフと共に、50億という破格の制作費で挑んだ娯楽大作。中々面白かった。プロットの部分は完璧です。007を始めあらゆる歴代のスパイ物を逆手に取ったキャラクター造りは、現代のニューヒーローと呼ぶにふさわしい出来です。全身刺青。インターネット上でのカリスマ。エクストリーム系のスポーツは万能のくせに銃はあまりうまく無い。「ウェルカム トゥー ザンダーゾーン!!」の掛け声もキマッています。それらがもてあますことの無い怒涛のアクションの連続は見ごたえ十分。全てのシーンのカット割が非常に巧くて、位置関係を把握させつつスピード感を出すというアクション映画の難しい宿命をキッチリこなしています。撮るのはかなり大変だろうと思わすシーンが多々あって撮影監督の骨の折れる音が聞こえてきそう。特に後半のスノボのシーンは圧巻!実写とCGをカット毎で使い分けた迫力満点のアクションはかなり凄いです。ただし、やっぱりこのシナリオを実現するには財力不足と思わす所もちらほら。特にメカ系の描写に弱い所噴出で、個人的には「おいおい・・」とツッコミたくなる部分でした。見た人間誰もが予想できることですが、この全世界的に好調な興行収入を以ってして速攻で続編を造るのは間違いないと思います。次は100億は使えると思うので期待したい所。


 見事な映像表現とそれを超える高い構成力に彩られた素晴らしい作品です。喧騒と怒号飛び交うながらも美麗な料理シーンと、焦燥感に追い詰められながらも見事な 給仕をする店員達との対比をベースにしたレストランの状況設定。そのなかに挟み込まれる細かい悲喜交々のシーン群が非常に巧いスパイスとして使われています。 ギャンブルに失敗し追われる立場の料理人。ほんの数分しか合うことの許されない恋人達。親子の葛藤。その他、マフィア、ゲイ、警官、批評家、芸術家、多種多様な人々 がそれぞれの人生の欠片をショーアップされた形で披露していきます。そして大きな主題である(と思わせていた)親子の対立が解けたと思わすシーン。父親の 寛大な台詞に思わず涙してしまいました。凄いのは先ほどの感動的なシーンを含めてたくさんの伏線があるが、別にオチ無くともこのまま終わっていと思わす その映画の造りが実は全て偽りで、ただ一つの伏線が本物でラストシーンにつながる所。色々な人物を描いて坩堝のように熱しきったレストランの緊張感が最後の 最後でガサッ!っと崩れます。この崩れる瞬間の感じが実に絶妙で巧妙です。ホントにお見事!と言いたくなりました。終わってみれば最初と最後の殺人シーンが 映画の本編をサンドイッチしている事に気づかされます。しかも最初の血も出ない綺麗な(失礼)殺人シーンと最後の血まみれの殺人シーンとが事の移り変わりを キッチリ表現している事にも舌を巻く。これ程構成が巧く出来ている映画は中々出ないと言っていいでしょう。なんとも素敵な作品でした。


 メキシコ期待のガエル・ガルシア・ベルナルが主演のパラダイスムービー。物憂げな人妻との夏の照りつくような日差しの中、繰り広げられる青春群像。痛々しい程の剥き出しの若さと達観した女性的視点が非常にいいコントラストを見せています。信じられないほどの原色の美しい自然が三人の肌の色を鮮烈に暴き出しているという印象を受けました。さてこの映画の大きな主題とはなんだったんでしょう?それが見終わった後、心を捕らわれた事でした。若さ?戻ることの無い人生?それでは余りに稚拙な気がします。もっと製作者の言いたい所は深いのであろうと思えるのですが構成が構成だけに終演後に気づくところが多すぎて帰りの道すがらかなり考え込んでしまいました。人妻は少年達に何を託したかったのか?少年達はこの出来事から何を学んだのか?そんなことが堂堂巡りしてしまいました。いろいろな見方の出来、噛む程に味が出るこの作品ですがもう一度ヒロインの表情、言動に注視して見直してみたい。そう感じた作品でした。レイティングが付いた作品ですがこれこそ若者が見るべき物だと思うのですが・・・。


 映画全編が主人公の一人称の目線のみで構成されている珍しい実験的な作品。広場恐怖症である主人公の目線も台詞の一端をになっていて面白い表現法方だと思います。ある程度先の未来が舞台になっていてその世界を独自の感覚で描いていて中々興味深かった。トレーラーを見たときからそのセンスが気にになっていたのですが結構カッコよかったです。思っていたよりも画面も洗練されていて。サイバーセックスや医療行為としての娼婦とか、かなりキツめの表現が多々あって無茶苦茶です。現代のネット社会が抱えている問題点なんかもそこはかとなく臭わされていて苦笑い。ヒッキーなんか今でも沢山いますもんね。ただし全体的に低調なので最後だけはきっちりオチを(大笑いできるような)付けて欲しかった。なんだかフワフワしたまま終わってしまってなんだか気持ち悪い後味の作品でした。


 リチャードギアが女性に酷い目にあう珍しい映画。この制作者達はリチャードギアが嫌い?と思わす程次から次へと姦しい輩が彼を苦しめます。それがもぅどう云う意味をもっているのか、と言うよりどうもこの作品は何が言いたいのか分らない、そんな感じ。妙な展開。愛深い故に子供の精神に戻ってしまう妻。さっきまで浮気なぞした事が無いと言ってたのに最愛の妻が病気になったとたん浮気する亭主。結婚式をドタキャンするレズの娘。物凄く毒の有る物語の進みにどうも付いて行けないって感じで。しかも最後の最後のオチでさらにわけのわからないメルヘンチックなのか寓話的なのか、どうにも理解しがたいシーンが表れるし・・・。なんだか久々に遠くの方に置いてけぼりをくらう作品でした。