18輪トレーラーでNYからサンフランシスコまで東海岸をひた走り、巨大な荷物を時間内に目的地まで送り届ける。車庫入れでボーナスポイントGETを狙え!

やっと探し出した直径約500mmのデラックスハンドル。


ハンドルを回し切ってロックするストッパー部分は最も力がかかるため、いつも一番壊れやすい。『18wheeler』にはいつもにも増して頑丈なハンドルメカが用いられた。


既存ゲームのハンドルは約270度の回転だが、『18wheeler』のハンドルは2回転半する。それゆえストッパー部分がとても複雑で、一度壊れるとすべて解体しなくてはならない。

プロローグ
アメリカ大陸を舞台に、18輪大型トレーラーを豪快に操り、巨大タンクや路面電車などを目的地まで運ぶ、そんな今までにないスケールのドライビングゲームを作ろう。今回の秘話は、この『18wheeler』という企画が通ったところから始まる。そしてステアリングメカ・スタッフは、制作開始からショウに出品するまでの約1年間、巨大なマシンゆえの困難と苦渋に満ちた濃密な時間を過ごすこととなったのだった。
メカニカルエンジニアの苦悩
筐体、映像、荷物にいたるまで原寸大の迫力を味わえる超ド級のものを作ると意気込んだのは良いが、ひとり密かに苦悩しているスタッフがいた。ステアリングメカ(ハンドル周りの機械設計)を担当する川端だ。
ハンドルを作るにはかなり高価な金型が必要なのだが、セガには従来のドライビングゲームで使われている金型しかなかったのだ。しかしこのゲームのコンセプトは18輪の巨大トレーラーを豪快に操る爽快感である。ハンドル径が270mmでは台無しだ。かといって今回の一機種のために新しい金型を作ることはできない。後は既存のハンドルを見つけるしかないのだが・・・・。
超デラックスハンドルを探して
スタッフは業者を片っ端からあたり、18輪トレーラーに合う巨大ハンドルを探し始めた。問題は意匠権だ。現在世に出ている車のハンドルには工業所有権があるため、どのハンドルを使ってもいいというわけではないのだ。ようやく見つけた意匠権のクリアなハンドルは、大昔のトラック用ハンドルで、ある自動車メーカーが手放した古い金型を使って作られたものだった。直径約500mm。普通自動車のハンドルでさえせいぜい400mmだから、ゲーム機の中では相当な大きさだ。
エンジニアを悩ませた『トルク』
次にエンジニアを悩ませたのは、トルクだった。トルクとは「回転力」のことで、その単位は力×長さで表される。簡単に言うと、回転軸から力のかかるポイントまでの距離×力の大きさのことだ。このゲームのハンドルが、既存のゲームハンドルの2倍の大きさを持つということは、同じ力で操作したとしても回転軸にかかる力は2倍、回し切ったところで回転を止めるストッパーにかかる力も2倍になるということだ。それは、今まで通りのノウハウでハンドル周りを設計していたら間違いなく壊れるということを意味する。『ステアリングはこのメカの弱点になってしまうかもしれない』。危機感を感じたエンジニアたちは思考錯誤を繰り返し、今までにないほどに太い軸と頑丈なメカを作った。しかし、そんな彼らの努力もアワと化してしまう事件が思わぬところで勃発した。
プライベートショウ直前の悲劇
試作機が出来上がり、いよいよショウに出品するというとき、社内でデザインレビューが行われた。これはできたものに対して「ここはどうだろう」とか、「問題ないだろうか」とか言いながら筐体の完成度を見るのだが、そのとき、ある上司がハンドルを目いっぱい切って、さらに渾身の力を込めてググ〜!!とまわした。
メキメキメキメキー!! という叫び声にも似た音が上がる。にもかかわらず、「これちょっと弱いんじゃないかー?」とさらに力を込める上司。バキッ! 鈍い音を立てたのち、カランと一回転して力なく止まった超デラックスハンドル。・・・これには普段おだやかな川端も本気でキレたという。彼は当時のことを振り返り、
「あのとき上司がやったことは実はすごく大切なことで、事故を起こさないために、リリース前には必ずやることなんです。でも、ショウを直前に控えているときに、しかも試作機でなく出展機でやられるとは・・・」と、いまだ残る苦渋に顔を歪めた。しかし同時に、今度は神妙な顔つきで、
「でも、開発から数年の月日が経った今まで一度も不具合が生じないのは、このときの上司の安全にかける意気込みのおかげかもしれない」とも語るのだった。
ターゲットはアメリカ人
ハンドル周囲崩壊からショウ開始までの数時間、スタッフたちは死ぬ気で修理にとりかかった。その甲斐あってか、新作マシンや人気ゲームを多数出品するセガ恒例のプライベートショウでは『18wheeler』に人だかりができた。そして発売されると、たちまち人気が高まった。今までのような0コンマ何秒を競いあうストイックなドライビングゲームと違い、大きい車体でグングン走り、たとえ周りのものにぶつかっても壊れるのは相手だけ、という豪快さが、サラリーマンのストレス解消になったようだった。
「この豪快さ、爽快感はアメリカ人にはもっとうけるぞ」。はじめからアメリカ市場を狙っていた開発者たちはみな力強い確信をもった。
そして発売から数ヶ月、アメリカへ出張したセガ社員は、どこのアミューズメントパークをのぞいても必ずこの大きなカラダの筐体を見ることになるのだった。2003年現在、『18wheeler』は一機種限りで終わることなく、『The King of Route 66』という第2弾を生み出し、ゲーマーから一般サラリーマンまで、多くの人々のストレスを発散している。