モニターで流れるアニメーション。アンパンマンと一緒にポップコーンを作っているような感覚で楽しめ、たくさんの子供が夢中になった。

ジャムおじさんのかまどをイメージした筐体ラフ。『ポップコーンこうじょう』というネーミングもアニメからヒントを得た。


カップ入りのポップコーンは見た目おしゃれで歩きながら食べることができ、カップルや大人にも人気を博した。


根強い人気に支えられた「ポップコーンこうじょう」。後続機の「それゆけ!アンパンマン ポップコーンこうじょう2」も今年5月に稼動を始めた。

プロローグ
アンパンマンがその人気を不動のものにして久しい‘91年。新ゲーム開発のため、いつものように打ち合わせに出向いた当時の販売担当役員は、偶然ひとつの筐体の前を通りかかった。大きな箱に電子レンジのような窓が付いていて、なにやらこうばしい香りが漂っている─。
これこそが、今回のプロジェクトの主役となる『ポップコーン機』のプロトタイプだった。今回の秘話は、大人気アニメキャラクターと偶然見つけた筐体をコラボレートさせ、子供の無限の夢を追いかけた男たちの物語である。
アンパンマン人気の波に乗れ!
ポップコーン機を使ったゲーム制作を始めたのは、折りしもアンパンマンを景品として使った『UFOキャッチャー』が大ヒットしていたころのことだった。子供たちから絶大な人気を得るこのキャラクターを利用しない手はない。販売担当役員は、従来はただポップコーンを作るだけだった機械に、アンパンマンをつけようと開発へ打診した。
大人になった子供たちが作るゲーム
それを受け、メカトロ研・宮本が企画の考案をスタートさせた。まず、ただデザインとしてアンパンマンを載せるのでは面白みにかけると思い、ポップコーンができる過程を見せるレンジ窓をあえて取り除き、代わりにモニター画面を取り付けた。子供たちのために、アンパンマンがポップコーンを作る過程をアニメで見せようと考えたのだ。また、ポップコーンができるのを待つ間、手持ち無沙汰にならないようハンドルを取り付け、これを回せば自分で作ったポップコーンが出来上がってくる!と思わせる仕掛けを作った。
(この企画は99%子供たちのためのものだが、残りの1%は、自分たちが子供の頃に描いた夢をカタチにしたくて作っているのかもしれないな)。スタッフたちは心のどこかでそんな風に思いながら開発を進めていた。
ポップコーンにバイキンマンが!!
筐体デザインでは、『それゆけ!アンパンマン』に出てくるジャムおじさんのかまどを再現した。そして当然、アンパンマンとともにメインキャラを張るバイキンマンも登場させたのだが・・・。筐体がすっかり出来上がったころ、スタッフのひとりがポツリと言った。
「よく考えたら、ポップコーンの中にバイキンマンがいるのはイメージ的に良くないんじゃないか?」。
確かにそうだ。『バイキンマン』という名前からして、食品会社は使いたがらないに決まっている。宮本は一瞬ヒヤリとした。この筐体を作るために、デザイナーには正月返上で働いてもらったのだ。いまさら作り変えてほしいなんて言えない。しかし待ち望んでいてくれたオペレーターさんの反応は、
「バイキンマンがいないんじゃつまらないでしょう。なんと言ったってメインキャラなんですから」というものだった。このときこそ、ゲームに携わっている全員が『子供の夢をカタチにする』という、ひとつの目的を共有していることを実感し、同時に、それを後押ししてくれている存在を再認識した瞬間だった。
100円スナックに圧勝!
こうして『ポップコーンこうじょう』は無事‘92年2月のゲームショーに出展することができた。
そしてロケテストでは、隣に1カップ100円の他社のスナック菓子ゲームが並んだが、売れ行きは200円のポップコーン工場がはるかに上回った。(やっぱりアンパンマン人気はすごい!)。お店に入るや否や、すぐに
「わーー!アンパンマンだー!!」と駆け寄って来る子供たちを見て、スタッフはあらためてキャラクターの強さを思い知った。そして、子供たちの満面の笑顔からこの上ない充足感をもらったのだった。
子供に誇れるゲームを!
ポップコーンこうじょうの発表から11年。ある日、宮本は3歳になる息子とショッピングセンターのゲームコーナーに行き、バージョンアップして味のバリエーションが増え、モニターが液晶になった『ポップコーンこうじょう2』を指して言った。
「これパパたちが作ったんだよ」
「すご〜い!」。キラキラ光るまなざしで父親を見つめる息子。そしてひと言。「パパ、お料理できるんだね」。
「・・・・」まだ小さすぎて“作る”の意味が通じなかったが、それでも宮本はうれしかった。自分の子供に誇れるゲームでなければ、きっとプレイヤーにも愛されないだろう。これから大きくなっていく子供たちのために、もっと楽しく、夢のあるゲームを開発し続けて行こう! そう改めて心に誓うのだった。